ninjinkun's diary

ninjinkunの日記

ビアフラ

早川のセールで買ったカート・ヴォネガットのエッセイを読んでいたら、「ビアフラ - 裏切られた民衆」という章があり、アフリカに数年だけ独立を宣言して存在し、最後は戦争に負けて消滅したビアフラという国の話が載っていた。あまりにヴォネガットの小説に出てきそうな国なので、最初は冗談なのかなと思っていたが、調べてみると史実らしい。ビアフラ戦争 - Wikipedia 自分が生まれる前の話だが、これまでは寡聞にして知らなかった。Wikipediaによると少なくとも150万人が死亡したということだから地域紛争としては相当な被害だが、なぜ自分は今まで聞いたことがなかったのだろうか。忘れないためにもここに記しておく。

エッセイにはこの消滅間際のビアフラをヴォネガットが実際に訪れた話が書かれており、非常に印象的な内容になっている。

Gレコ舞台挨拶

劇場版GのレコンギスタVの舞台挨拶に行ってきた。チケットが抽選だったので9時と12時の部両方に申し込んだら、なんとなく予想していた通り両方とも当たってしまったので2回見てきた。おそらくそんなに倍率も高くないのだろう。

富野監督を初めて生で見られたので満足した。様々なインタビューで見るような富野節は控えめで、スタッフや観客への感謝を何度も口にしていた。普段目にするメディアの記事は尖った発言を強調しているのだろう。今調べてみたら、舞台挨拶の内容は以下の記事に詳しく載っていた。

moviewalker.jp

自分はテレビ版Gレコは一応最後まで見たのだが、中盤から何が起こっていたのか記憶がない。しかしこの劇場版Gレコは第1部から劇場に通い、全て楽しく見通した。振り返ってみると第1部、2部は「わかりやすくなった!」という感想が最初にきたが、第3部から「何かすごい映画を目撃しているぞ…」と強く内容に引き込まれるようになった。4、5部はそれが加速して、最後には綺麗に着地する。しかし大気圏突入がカップルの愛の表現になるとは…。

テレビシリーズで挫折した人も多いと思うが、テレビ版1〜3話あたりで感じたあのワクワク感を劇場版はきちんと最後まで引っ張ってくれる。劇場版1〜3部はアマプラで見られるので、まずは第1部を試してみてほしい。

www.amazon.co.jp

マイスモールランドとFLEE - 最近観た難民を扱った映画2作

最近立て続けに映画マイスモールランドFLEEを観た。どちらも難民を扱った作品で、前者は日本の高校生として生きるクルド民族の少女、後者はデンマークで生きるアフガニスタン出身のゲイの若者が主人公である。両作品ともとても素晴らしく、強い印象を受けた。この作品がもっと広まってほしいので、ここで自分の感想と共に紹介してみる。

マイスモールランド

日本の川口に暮らすクルド人難民のチョーラク一家、クルド文化を大切にしながらもそれなりに日本に溶け込んでいる。長女のサーリャは時々在日クルド人との通訳に駆り出されたりしながらも高校に通い、さらにバイトもして大学進学の資金を貯めている。しかしある日、一家の難民認定が却下されて在留許可証が無効になり、一家の運命は一転する…というストーリー。

これまで自分は難民について具体的なことは何も知らず、たまにニュースで見ても遠い国際問題という認識だった。しかし主人公サーリャの日本で高校生という設定によって、この問題が一気にリアリティを持って立ち上がってくる。

サーリャは教師になる目標を持ち成績も優秀、少し距離を感じながらも友達と楽しく過ごし、バイト先の男の子とちょっと仲良くなったりもする。そんな彼女が、在留許可がなくなった途端にバイトを首になり、大学の推薦も取り消されてしまう。前半で青春がきちんと描かれる分、後半の転落の絶望が深い。

この映画を観て初めて自分は「国を失ったらどうなるか」を考えることになった。これまでは当然のように、国や自治体が自分の存在を認めて自由を保障することを前提にして生きてきたので、恥ずかしながらそんなことを考えてみたことがなかった。

在留許可がなければ就労ができない。就労できなければお金も稼げないし、大学教育も受けられない。では何ができるのか?何もできない。かろうじて入管に収監されることだけは免れているが、何もせずにそこに居ろと言われる。

自分が17歳で何もせずにそこに居ろと言われることを想像してみる。未来は全て閉ざされている。出口の見えない深い絶望。そこから立ち上がれるだろうか?

これまで自分には生きているだけで人権があると思っていたが、実際は国民にのみ保障されているもので、国家の枠組みから漏れてしまった人は庇護されない。もちろん新発見などではなく、ずっと存在している現実で、ただ自分が考えてこなかっただけだ。自分には国があってよかったという素朴な感想も浮かんでくるが、そこで止まってはいけない。

この映画は難民認定しない日本という状況を自分が黙認していることを突きつけられる作品でもある。この作品を契機に難民問題を自分と地続きに感じるようになったので、まずは募金からアクションを始めてみようと思う。

なお映画は普遍的な青春ものとしても作られているので、暗い作品というわけではない。あと撮影がドライブ・マイ・カーの撮影監督によるもので、映像の締まり具合がとても良い。

FLEE

もう一作のFLEEの方はアフガニスタンで育ったアミンが主人公のデンマークのアニメーション作品。アフガニスタンの王政打倒から社会主義政権の樹立、その後のムジャヒディンによるテロからの支配を首都カブールで体験したことが発端となり、国を追われる過程が描かれていく。

マイスモールランドは在日クルド人コミュティへのインタビューを元に作られたフィクションだったが、こちらは実話で名前だけが変えてあるとのこと。

冒頭の在りし日の賑わうカブールのシーンから突然主人公がウォークマンで聴いているA-haのTake on me(つまり西側の音楽)が流れることで、これは自分の現実と接続している話なんだと引き込まれた。その後ムジャヒディンによる首都攻撃から辛くもモスクワへの脱出に成功するのだが、恒久的なビザはないので一時的な経由地にしかならない。そこからさらにヨーロッパを目指すのだが、その過程で密入国業者に辛酸を舐めさせらる様が凄まじい。

総じてアニメーションという表現をとっているが、それは主人公の匿名性を守るためであり、悲惨な現実を我々観客に受け入れやすくするためのフィルターでもある。自分はアニメーションにこのような可能性があるとは思っていなかったので、そういう意味でも意表を突かれた。

逃げ込んだモスクワで観光ビザが切れ、不法滞在になっている中で警察に賄賂を渡しながらホテルに一年以上閉じこもっているシーンがある。ここにマイスモールランドと同じ未来が見えない絶望を感じた。この時のアミンはおそらく15か16歳くらいだと思うのだが、学校にも行けずベッドの上でメキシコのテレビドラマを見続ける日々を送る。

自分を振り返ってみると、15~20歳くらいのときはとにかくいろんなことを試してうまく行ったりダメだったりしながらぼんやりと自分の輪郭を見出していった時期だった。あの時期に全てのアクションを奪われるというのは、想像してみるだけで本当にきつい。今とは全く違った自分になっているのは確実だろうし、何をしても無駄と諦めてしまって何もアクションができない無気力な人間になっていてもおかしくない(成人したアミンは研究者として成功している。凄まじい努力があったのだろう)。

そしてアフガニスタンでは受容されないゲイであるアミンが亡命先のデンマークでは受け入れられているという事実に、彼にとっての安住の地はたとえアフガニスタンが平和でも存在しなかったのかもしれないと思うと、ここでも国家と個人の関わりを考えずにはいられない。

たまたま公開初日で監督へのオンラインインタビューがあった回に当たったので、推していきたい(インタビュー写真の投稿はどんどんしてくれてOKとのこと)。

おわりに

たまたま観たマイスモールランドで難民に対する解像度が高まったところでタイミング良くFLEEが公開されたので、より深く作品に入り込めたと思う。どちらも自分にとって大切な作品になった。

マイスモールランドは反響が大きく上映館を拡大するらしいし、FLEEは公開されたばかりなのでまだ当分上映しているはず。どこかのタイミングで配信にも来るとは思うが、集中力を要する作品なので自分としては映画館で観るのがおすすめである。

この作品が多くの人に観られることを願っている。

昼過ぎに出かけようとしてAirPods Proのケースを開けたら片側しか入っておらず、背筋が寒くなった。昨日どこかで落としたのだろうか。電車、映画館、飲食店などの記憶を反芻するがいつまであったのかなんて覚えていない。

しかし「探す」アプリによると右側は朝の9:48まで家の中にあったらしい。今まで外出していないことを考えると家の中にあると期待して良さそう。

そこから1時間に及ぶ捜索の末、テレビ台の下の隙間で発見した。探すアプリの情報がなければまずは昨日の外出先を疑っていたはずで、家の中をこんなに探さなかったかもしれない。なお、アプリについている探索機能(近づくと反応するやつ)は役に立たなかった。AirPodsはAirTag等とは違いUWBが搭載されていないので、たまたまBluetoothが繋がったタイミングでしか存在を確認できないのかもしれない。

探すアプリには昔からお世話になっている。 ninjinkun.hatenablog.com

氏名変更クエスト#7

ある程度手続きが落ち着いたので、このシリーズも一旦終わりにしようと思う。最終的に名義を変更したのは以下の通り。

  • マイナンバーカード
  • 免許証
  • パスポート
  • 会社の従業員管理システム内の名前
    • それに紐づいている保険証と年金
  • クレジットカード1枚
  • 証券会社
  • iDeco
  • ストックオプション

一方変更しなかったのは以下の通りである。

  • 銀行全て
  • 残りのクレジットカード
  • 各種オンラインアカウント

銀行については急いで変更する必要がないというのもあるが、旧姓で個人事業主やオンラインショップをやる場合に旧姓の振込先口座が必要という記事を読んだからである。しかし例えばこの先引っ越して家を借りるには新姓の口座が必要になるはずなので、いずれ新しく一つ口座を作るつもりではいる。

また、以前のエントリにも書いた通り各種証明書には旧姓併記をしているが、今のところ役に立ったことは一度もない。そもそもどこで旧姓が使えるのかわからないし、不一致でトラブルが想定される場合には安全のために新姓を使うという運用になってしまっている。こうやってだんだん旧姓が消えていくのかと思うとため息が出る(暗い終わり方で申し訳ない)。

氏名変更クエスト#6

一週間のUS出張が終わって無事帰国した。氏名変更クエスト#3 - ninjinkun's diaryでは海外で旧姓を試してみると書いたが、実際は全て新姓で通した。まず航空券の予約は確実に新姓でないといけないとパスポートセンターの人に言われていたので、わざわざその先をチャレンジする気が失せてしまったというのが実情である。そもそもプライベートではなく仕事なので、自分の謎のチャレンジ精神で迷惑をかけたくなかったというのもある。

具体的に新姓を使ったのは以下の通り。ホテルは自分で予約する状況がなかったので試せていない。

  • 航空券
  • 旅行保険
  • 出国時の陰性証明
  • 帰国時の陰性証明

一方お金の支払いは全てApple Pay *1で払えたので、クレカは旧姓のままで問題なかった。念のため1枚だけ新姓にしておいたがそっちの出番はなし。

余談だがUSの同僚との会話の中で、「彼女が医大生だから結婚時には自分の性を変えたくないと言っていて、俺の方を変えるか悩んでいる」という発言があった。突っ込んで聞いてみたところ、もちろん別姓は可能なのだが、少なくとも彼の周りでは姓を合わせる方が普通らしい。おおUSでも同じ問題がと思ってちょっとニヤニヤしてしまった。もちろんついでに僕の氏名変更エピソードも披露した(もはや鉄板ネタと化しつつある)。

*1:Apple Payはカードによってはオンライン支払いで跳ねられる場合があったので、念のため複数枚カードを登録しておくとよさそう。僕の場合はAmazon Prime Masterカードと三井住友VISAゴールドNL家族カードを登録してあったが、Amazonがなぜか使えない場合があった。実店舗では問題なかった。

GWやったこと

10連休。前半ではキャンプ、後半は映画館に行く以外は家にいた。何かしらやっていないと昼からビールを飲んで1日が終わってしまうので、せこせこタスクを積むようにしていた。

しかし後半の予定がない期間は無職のシミュレーションをやっているかのようだった。明日会社に席はあるだろうか(フルリモートなのでそもそもオフィスがないが)。

氏名変更クエスト#5

来月のアメリカ出張が迫ってきた。そこで気になるのは、旧姓のクレジットカードのまま海外に行っても不都合はないのかという点だ。カードも銀行も一度名前を変えると戻せないのでできれば変えたくない。(元々は変更しようと思っていたのだが、自分の使っているソニー銀行が旧姓での振込に対応してないことがわかったので変更したくなくなった)

カードが旧姓のままでもパスポートを照合されなければ不一致はわからない。現実的にはパスポートを確認されるのはホテルやお酒が出る場くらいだろうから、問題になりそうな場は限定的なはずだ。出張の間は会社がホテルや食事代を払ってくれるので大丈夫。問題なのは自分個人で遊びに行った場合である(もちろん遊びには行きたい)。

まずカードに書かれた名義がどれくらい重要視されているのかという疑問が出るが、これは実際は大してチェックされていないのではないかという推測をしている。楽観的すぎるだろうか?トラブルがあった場合の保険や補償などで問題が出る可能性はあると思うが、旅行保険は別でかける予定なので、問題になるのはカードの不正利用の場合くらいだろう。

次にもし不一致が問題になったとして、パスポートの旧姓併記がどれくらい通じるかという話になる。これはやってみないとわからないが、先日渡されたリーフレットの効果が測れるのでむしろちょっとチャレンジしてみたい。

今の所のプランは、まず名前が出ないApple Payをメインで使う。そして使えない場合は旧姓のカードを出し、最後に通じなかった場合に備えてお守りがわりに新姓のカードを作って一枚持っていこうと思っている。

今回はまだ何も氏名変更していないが、自分の葛藤の記録として記しておく。

氏名変更クエスト#4

昨日の昼休みにできあがったパスポートを受け取ってきた。きちんと旧姓併記されている。パスポートは完全に新しい冊子になっていた。

試しに新パスポートをワクチン接種証明アプリに読ませてみたら、新しい姓とパスポート番号でもう一度接種証明が作られた。海外用の摂取証明には旧姓は併記されていない。まあこんなものだろう。

昔のベストセラーでタイトルだけ知っていたけど、Ep.7: トミヤマユキコ・清田隆之が薦める「ジェンダーにまつわる諸々をやさしく学べそうな本~キッカケ編~」 | 『アトロク・ブック・クラブ』〜アフター6ジャンクション presents | ポッドキャスト on Audible | Audible.co.jpを聴いて興味を持ったので読んでみたらとても面白かった。大阪で芸人をしている著者が東大上野研の門戸を叩き、社会学との出会いを通して新しい自分や言葉を発見していく様が生き生きと描写されている。しかし芸人として仕事をしながら東大のゼミに通い続ける著者のバイタリティは凄まじい。

この本を読んで、自分も学生の時に他学部受講で社会学の授業を取って衝撃を受けたことを思い出した。「自我論」というすごいタイトルの授業だったが、学歴や就職活動という学生に身近な題材を取り上げて、それがどういう構造で必要とされているか、自分達自身がどうその構造に加担しているかを毎回問われる授業だった。自分はそれまでメタな構造を疑うという方法論を知らなかったので、こういう頭の使い方があるのか!大学ってすごい!と無邪気に興奮していたことを覚えている。自分の学部は理系だったので、個人が感じる疑問や矛盾を出立として学問分野が成立するというのも新鮮だった。

残念ながらKindle版はないのだが、文庫で手に入るし文章に勢いがあってさっと読めるので、学生時代の気持ちをもう一度味わいたい人におすすめである。