最初に光文社古典新訳文庫が出たのが大学三回生のときで、その時は「この時代にカラマーゾフの兄弟なんぞを読んでいる俺のための文庫か?」と学生らしい思い込みで勝手に興奮したような記憶がある。最初はこの文庫を全部読んでやろうと意気込んでいたのだけど、刊行ペースも早く、当然すぐに追いつけなくなってしまった。
最近この文庫を創刊した元編集長の本を読んでみた。週刊誌の編集者だった人が興したと聞いて最初は意外に思ったけれど、週刊誌で読者のニーズに徹底的に応える姿勢を鍛えられた人が古典を手掛けてヒットしたと聞くと、なんとなく納得感がある。2000年代に古典の文庫を新しい事業として始めるというのはやはりかなりの冒険だったようで、ベンチャーの立ち上げのようでワクワクする話になっている。
訳者がその本にかける思い入れについて語るのが好きなので、この本も面白かった。煽りみたいなタイトルがついているが、中身はおっさんたちが本について喋っているだけ。
古典新訳文庫のいくつかの翻訳では誤訳論争などもあったが、今でも自分はこの文庫のファンである。海外文学が読みたくなった時には、古典新訳文庫が刊行しているものをチェックするのが習慣になっている。