ninjinkun's diary

ninjinkunの日記

チームで読みたいプロトタイピング本『プロトタイピング実践ガイド』

スマートフォンのプロトタイピングを丁寧に解説した書籍、 プロトタイピング実践ガイド スマホアプリの効率的なデザイン手法 を読みました。fladdictさんとフェンリルの荻野さんの共著ということで、期待が高まります。

自分は昔fladdictさんがペーパープロトタイピングを実践されてると聞いてから、書籍 ペーパープロトタイピング 最適なユーザインタフェースを効率よくデザインする *1を読んだり、fladdictさんの資料を参考にしたりしながら、プロトタイピングを仕事に取り入れてきた経緯があります。その辺りの見様見真似でやってきた手法が、本書では整理されて解説されています。まさに自分が欲しかった本が出たというのが、まず読み終えての感想でした。

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チームで読みたい本

プロトタイピング、特にペーパープロトタイピングは、一度取り入れた開発フローを回してみないことには、なかなか効果が伝わらないものだと思っていました*2。 自分はプロトタイピングはデザイナー、エンジニア、ディレクター全員で取り組むのが理想だと考えています。しかし、いきなりプロトタイピングを前提知識とするのはなかなか難しく、今まではとりあえず実践して見せる以外に方法を持っていませんでした。

しかし今ならこの本があります。自分にとって、本書はまさに欲しかった、チームで読むプロトタイピングの本です。プロトタイピングの意義から実践手法までがコンパクトにまとまっており、例も豊富です。チーム全体の前提知識が揃っていれば、まずリサーチ、そしてプロトタイピングから始めるという流れがもっとスムーズに実行できるようになると期待しています。

文中にも

プロトタイピングは設計者のみの仕事ではなく、チームやクライアントを含めたプロダクト関係者全員で、さまざまな視点からソリューションを見つけるためにも行います。プロダクトの設計と、情報共有、認識共有のための手段としてプロタイピングを実施するのです。

とある通り、プロトタイプはプロダクトについての共通言語としての側面も持っていると感じています。チーム全体でプロトタイピングを行うと、実装前でもエンジニア、デザイナー、ディレクター間でUIやサービス設計についての議論が活発に行われるようになるのを、自分も何度か経験しています。

本書の内容

本書では手法がペーパープロトタイピングとツールプロトタイピングに分けて整理されており、最後にプロトタイピングの例が5案も付いています(そのうち1つはTiltShiftGen2!)。POP等新しく出てきたツールを活用して、ペーパープロトタイピングから動きを付けたプロトタイピングへさっとシフトするというのが現代的で良いなと感じました*3

また、社内向けのプロトタイプとコンペに出すためのプロトタイプの違いなど、クライアントワークを意識した記述も所々挿入されます。自社サービスでもクライアントワークでも、スマートフォンアプリのように、インタラクションがリッチで、実装コストが高いプロダクトに関わる人全般的におすすめできる書籍と言えると思います。

プロトタイピングだけに留まらず、リサーチからペルソナの作成、ユーザーレビューまでのUX手法が、短いながらも一通り解説されているので、縮小版 About Face 3 インタラクションデザインの極意 としても読めそうです。

プロトタイピングの話をしたい

この書籍を契機に、プロトタイピングについての議論やノウハウが色々出てくることを期待したいです。先日YahooとDeNAのUX勉強会に参加して、やはり同業他社のプロトタイピングの話は面白いと思いました。自分ももっとこういう情報を出して行きたいという気持ちはあります。ただ、仕事でのプロトタイプは製品と深く結びついているので、なかなか一社員が公開しづらいというのが難しい所ですが…。*4

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写真はプライベートで作った雑なプロトタイプ

おわりに

今後プロトタイピングに不慣れな人がチームに入ってきても、これを読んでもらえばOKという本が出版されたことが喜ばしいです。アプリを開発する会社なら、オフィスに1冊あると便利な本だと思います。

*1:ユーザーテストについての言及が多いので、本書を読んだ後でも読む価値がある書籍だと思います

*2:余談ですが、紙に書いて粗いパターンをどんどん書き出すというのは、ツールで綺麗なモックを作るのに慣れているにデザイナーさんには抵抗があるという場面を見たこともあります

*3:丁度WWDCのビデオでAppleKeynoteを使ったプロトタイピングの話をしていたのを見た後だったので、この辺りはホットなトピックのようです

*4:昔の自分の机には、プロダクトがヒットしたら解説しようと思っていたペーパープロトタイプの残骸が、時間が経っても捨てられずに大量に残っていました