ninjinkun's diary

ninjinkunの日記

『チームが機能するとはどういうことか』を読んだ

Incrementsの知人が社内で輪講していると言っていて、気になっていたので読んでみた。創造的なチームを作るために気をつけることと、そのために必要になるリーダーシップについて書かれている本とのこと。

現代のチームが固定されたメンバー制から専門集団の一時的な集まりになっている(例えば病院、災害救助、スタートアップなど)ことから、チーム構造からチームワーク自体へ注目するという意味で動詞のチーミングが提唱される。

心理的安全

自立的かつ創造的なチームのキーになるのが心理的安全である。

心理的に安全な環境では、何かミスをしても、そのためにほかの人から罰せられたり評価を下げられたりすることはないと思える。手助けや情報を求めても、不快に思われたり恥をかかされたりすることはない、とも思える。そうした信念は、人々が互いに信頼し、尊敬し合っているときに生まれ、それによって、このチームでははっきり意見を言ってもばつの悪い思いをさせられたり拒否されたり罰せられたりすることはないという確信が生まれる。

現在持っている知識の限界を認める…あることについて自分は知らないとリーダーが認めると、謙虚さを誠実に示したその姿勢によって、メンバーにも同様の姿勢を持つよう促すことになる。

心理的安全というキーワードの導入により、このチームには心理的安全はあるか、メンバーは心理的安全を感じているかといった議論が可能になるのが良いと思う。

また、心理的安全を高めようというプロジェクトを行って、結果的に失敗する話も書かれていたのが印象的だった。トップダウンで心理的安全高めようぜ!と言っても効果は無く、心理的安全を高める個々のリーダーシップ行動が重要であると書かれている。

心理的安全についてはThe five keys to a successful Google teamで見たことがあったのでGoogleの文化と思っていたが、この本の方が先に出たようだった。

フレーミング

フレーミングの力」という章があるのだが、このフレーミングの概念が今ひとつわからない。

フレーミングは人々に行動を根本的に変えてもらうためのきわめて重要なリーダーシップ行動だ。チーミングと学習を促すときにはなおさら欠かせないものになる。また、フレーミングをすると、人々は前向きで生産的な変化に伴うぼんやりとしたシグナルを察知しやすくなり、自分自身のものの見方に対する理解が容易になる。

文中ではこの言葉がいくつかの意味で使われているように感じる。自分が読み取ったのは以下の通りだが、間違っているかもしれない。

  • 個々人が思い込みや信念を持つこと、またそれを変化させること
  • メンバーに役割を与えて、期待をすり合わせること
  • やってはいけない、踏み込んではいけない領域を示すこと
    • そのことで逆にその範囲内で自由に振る舞えるようになる

バウンダリーオブジェクト

専門性が異なる人間同士の混合チームで境界を越えてコラボレーションするための方法として、バウンダリーオブジェクトという概念が紹介されていた。

ボストン大学のポール・カーライル教授は、自動車産業の新製品開発チームの中にある知識の障壁を研究した。そして、バウンダリー・オブジェクトによって、職業や専門知識による境界が取り払われやすくなることを見出した。模型や図の要素を示したり話し合ったりすると、専門用語のわかりにくさが解消されるのである。

これは自分の仕事で言うと、ペーパープロトタイプやFlintoなどを使って作る動的なプロトタイプが相当する。確かにアイデア段階でデザイナー、エンジニア、ビジネス職が集まって議論する際のベースとして一番有効なのは、見て触れるプロトタイプである。

そしてプロトタイピングいいよねと言うより、バウンダリーオブジェクトとして有効だよね、という視点で考える方が応用範囲が広いように思う(やっていることは同じで、言葉が違うだけなのだが)。自分の意見が理解されないときや相手の意見が理解できないときに「この場合のバウンダリーオブジェクトになるものは何だろう」と考えることで、図を描いたりプロトタイプを作ったりする具体的な行動に移れるようになるのではないか。

おわりに

多少冗長で読むのが辛いところもあるが、現代的なチーム活動とリーダーシップについて大切なことがまとまっていると感じた。自分の経験上も、確かにこの本に書かれている条件が満たされていたチームは良いチームだったと言えると思う。そういう「あー確かに」と言えるような良いチームの条件が言語化されているところに本書の魅力がある。

ワーク・ルールズHow Google Worksが好きであれば、さらに楽しく読めるかもしれない。

4/1追記

PMJPのSlackでドラッカー風エクササイズというのを教えていただいいた。メンバー同士の期待の摺り合わせるためのワークショップとのことなので、チームのキックオフ時や新しい人がジョインした際に行うと、チームの心理的安全を高めることができるかもしれない。