ninjinkun's diary

ninjinkunの日記

私の職業観を大きく変えた3日間-JTPAシリコンバレーツアー2008まとめ

JTPAシリコンバレーカンファレンス2009の参加申込み〆切が迫ってきました。私が昨年参加したシリコンバレーツアーとはフォーマットが変わっているのですが、趣旨は同じです。シリコンバレーに行き、当地で働くことを真剣に考える機会、それがJTPAシリコンバレーカンファレンスです。

私がシリコンバレーツアーに参加したのは、今年の春でした。まだM1だった私にとっては、丁度就職活動の真ん中くらいの時期で、正直参加が確定した後でも参加するかどうかを悩んでいました。しかし最後には好奇心の方が勝ち、面接の日程を延ばして貰うなどして参加しました。

私はこのツアーを通して、同年代の優秀な人たちから非常に刺激を受け、技術に真剣に取り組むための大きなモチベーションを得ました。そして、現地のスタートアップ企業を見学したことで、大企業ではなくベンチャーに就職する道を選ぶことになりました。

もう申込み〆切まであまり時間がないですが、カンファレンスをお勧めする意味も込めて、昨年の内容ではありますが、ツアーの内容を簡単に説明し、私の印象に残っていることについて書こうと思います。

ツアーの内容

ツアーは3日間で、主に以下の内容で行われました。

上記のリストにあるように、ツアー自体がかなりバリエーションに富んでおり、刺激的でした。オラクルのエンジニア個室に驚き、Googleのキャンパスでランチを食べ、Apple Company Storeでお土産を買いました。

今年のカンファレンスではツアーの部分はなくなりますが、現地で働いておられる方々のお話を伺う日程が凝縮されて1日にまとまっているとのことですので、会社訪問などは各自で行くことで、同じ体験はできると思います。事前に参加者同士のコミュニティが用意されますので、一人では心細い方も、行動力のある人を見つけて協力し合えばかなり面白い経験ができるはずです。

得たもの

いきなりシリコンバレーと直接関係ないことから入って申し訳ないのですが、ツアーの中で私にとって最も衝撃だったのは、同年代の優秀な人たちを目の当たりにしたことです。自分はまだ何者でもない・・・そのことに凄く焦りを感じました。

特にid:kzkさんとの出会いは衝撃的でした。東大のM1でありながら、PFI*1のCTOであり、OSSにも成果を出している・・・。ツアー中に彼と喋った時間はあまり多くないのですが、会話の内容は今でも印象に残っています。

当時の私は、自分の技術力に自身がないけれど、プログラムを書くのは好きで、それを人に使って貰えると嬉しい、という中途半端な状態で、技術で食べていくべきなのか真剣に悩んでいました。楽しいけど、仕事にするほどではないのかな・・・と真剣に文系就職を考えたこともあります。しかし懇親会で彼と話したことで、そういった迷いが吹き飛びました。酔っぱらいながら悩みを打ち明ける私に、彼は、「いや、それ向いてるよ。」と言ってくれたのです。

彼にとっては何気ない一言だったのかもしれませんが、今にして思えば、その一言が私の背中を押してくれたように思います。自分でもいいんだろうか。自分のようなものでもエンジニアになっていいんだろうか。そういう迷いが、自分より格上の技術者である彼からの肯定によって、吹き飛びました。(今にして思うと何の根拠もないのですが ^^;)今はまだ代表作もないような未熟な自分でも、ひとの役に立つものを作れるかもしれない。そんな「勘違い」をさせてくれた一言が、今も私を支えています。

帰国してから技術書を買い込み、勉強をするようになりました。また、技術系のイベントや勉強会に行くようになり、多少は幅も出てきたように思います。*2

もうひとつ印象に残っていることに、現地のスタートアップを見学したことが挙げられます。RockYou*3という、FacebookやMySpace上で動作するWidgetを作っている、非常に若い会社です。私たちは行った日は土曜の夜で、会社には誰もいませんでしたが、雰囲気を知るには十分でした。

オフィスの中に卓球台があり、フリードリンクの冷蔵庫があり、スポンジの弾を打ち合うオモチャの銃があり、机の上にはオライリーの本が散らかっていました。そこから感じ取れることは、オラクルやGoogleとも違った、圧倒的な「若さ」でした。会社を見た目でしか評価していないと怒られそうですが、私はその雰囲気と自分の指向するものが符合するのを感じました。

自分が働きたいのは、"これから自分たちで文化を作っていける会社"。若い経営者、技術の話で盛り上がることのできる同僚、風通しの良い社風・・・。イメージが明確になったこともあり、その後しばらく、現地の大学院に留学し、シリコンバレーでスタートアップ企業に参画するという道を真剣に考えていました。


その後

夢のない話になってしまうのですが、帰国してからしばらくすると、留学への思いは薄れてしまいました。正直に書くと、M2になり、もう大学院を卒業する自分があえて海外の大学院へ入り直すというモチベーションが保てませんでした。周囲に流され、気がつくと普通に就活を続けていた自分・・・。Web系の会社やSIerをいくつか受け、内定を頂いたのですが、やはりあのRockYouのようなスタートアップの雰囲気が忘れられずにいる自分を意識せずにはいられませんでした。

そしてそれらの思いから、夏、内定を持っているにも関わらず、はてなでインターンをしました。大学院の研究もあまり進んでいない中で、M2でインターンというのはかなりのチャレンジでしたが、最終日に内定を頂き、来年からはてなで働くことになりました。

私にとって、日本の会社の中でシリコンバレーのスタートアップのイメージに最も合うのがはてなでした。あのツアーがなかったら、自分がなにをして食べていくのか、どんな環境で働きたいのかについて明確なイメージを持つことはなかったと思います。シリコンバレーまで行ってただの会社見学をしてきたようで申し訳ないのですが、RockYouを見学した際の体験が決め手になったことは間違いありません。私の中ではシリコンバレーツアーからはなてなに決めるまでの流れは、枝分かれしながらも繋がっているのです。

このツアーの本来の趣旨がシリコンバレーに興味を持つ人材を増やすことなのは理解しているつもりです。私は結果的に日本の会社に就職するので、JTPAの方々意向を反映できなかったかもしれません。しかしこのツアーが私に大きな影響を与えた事実は変わりません。そのことだけとっても、私にとっては大きな財産なのです。


そして私と一緒に時間を過ごしてくれたツアーのメンバー、そしてこのような素晴らしい機会を提供して頂けたJTPAの方々、訪問させていた頂いた会社の方々に感謝します。
本当にありがとうございました!

来年も行動力のある、意識の高い若い人たちがシリコンバレーの地を踏むことを願っています!

*1:今年の夏にPFIとはてなの戦略的提携を見て、(一方的に)縁を感じてしまいました

*2:思えばOSC Kansaiではてなインターンのことを知ったのも、この辺がきっかけだったのかもしれません

*3:来年RockYou Japanが日本上陸するようです